対談

九州大学久保総長が聞く‼(第9回)

語る人

九州大学医学部小児科教授
大賀 正一

聞く人

誠愛リハビリテーション病院長
「臨牀と研究」編集委員
長尾 哲彦

長尾
本誌の読者は,クリニックで外来診療をしている医師が多いと思います。地域のニーズに応じて小児を診ている先生も少なくないと思いますが,やはり内科,外科をバックボーンとした医師にとって小児診療は,自分の土俵と思えないのが実際のところで,悩むことも多いわけでございます。本日は,クリニックの医師が診る小児外来に関しまして,そのコツや要点を余すところなくお話しいただこうと思いまして,九州大学の小児科学教室教授の大賀正一先生にお越しいただきました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

小児科と内科の違い

長尾
まず,我々内科をベースとした医師が突き当たる問題として,小児科と内科は,似たような診療科でありながら,かなり大きな違いがあることを感じるわけですが,先生からごらんになって,どのあたりが違うとお考えでしょうか。
大賀
最近とくに,遺伝的な要因が詳細に明らかになってきました。また,環境要因でも,20世紀の終わりぐらいに言われていたDOHaD仮説,小さいときに起こるいろいろなイベントが原因で,成人の病気を発症してしまうということがしだいに明らかになってきています。小児科の特徴としては,フォローアップ期間が長いこと,遺伝的な背景が強く影響すること,そしてこれに感染症が深く加わってくることです。小児期には,短い間にさまざまなイベントがダイナミックに起こってきます。内科の安定した状況下で複雑な要因が混じり合って病気が起こるとはかなり違っているということです。
長尾
その辺は,実際の臨床の場においてどういう形であらわれてくるのですか。
大賀
例えば,新生児に未発症の病気がたくさん存在します。私たちは通常1ヵ月健診を行うわけですけれども,ミルクを飲み始める前に起こる病気,飲み始めてから起こる病気,それから産科から退院した後感染を起こして・・・というふうに,いろんなものに曝されていきます。最初の1年間というのはとくに気になるところです。小学校に上がってくるとずいぶんと安定して,元気な子供たちが多くなります。生まれてから小学校に上がるまでというのは,からだにも心にも急激な変化を伴うので,とくに十分な注意が必要な期間だと思います。もう一つは,両親の影響です。大きな遺伝的要因であるとともに最も重要な環境因子であるのも母親です。したがって,母親と過ごす期間,特に乳幼児期は人生のなかでとても大切な時期になると思います。

病歴聴取と身体診察

長尾
実際に小児を診ていて困ったなと思うのは,入口の病歴聴取のところです。内科でも高齢者になってくると病歴聴取がかなり難しくなってきますけれども,お子さんは,我々の質問になかなか答えてくれないし,どこが悪いかをきちんと教えてくれないので,まず入口からひっかかることが多い。年代によっても違うでしょうけど,小児から症状を聴き出すのは骨の折れる仕事ではありませんか?
大賀
私たち小児科医からすると,高齢者の病歴聴取というのは本当に大変ではないかと想像しています。小児の場合,ぐあいが悪くて来るときにはまず嘘をつくことがありません。疾病利得がないので,本当にぐあいの悪い乳幼児はありのままです。言葉は十分に話せなくても,私たちがそれを感じてあげることができればいいので,どういう様子であるかをつぶさに観察することが一番だと思います。小学生になってだんだん自我が出始めてくる時期に,症状を説明できるようになると詐病も考えなくてはなりません。何より怖がらせないことが一番ですので,母親といい雰囲気で診療を始めれば,子供もリラックスした形で病歴を聴取できると思います。
長尾
まず母親からということですね。
大賀
そうですね,やっぱりお母様と和やかに話している雰囲気を子供は感じ取りますし,それが大事だと思います。
長尾
いきなり子供に話しかけるよりも,まずはお母さんと話すことが,ちょっと遠回りになるけど,いいやり方なわけですね。
大賀
まさにそのとおりで,成人科と違うのは,お母さんが子供を連れてくるので,患者さんは2人になります。つまり,最も愛する者が病気になっていることで,お母さんにはすごいストレスがかかっています。心配なまま診察室に入ってきますから,とにかくまずお母さんの気持ちを和らげてあげることが重要です。
長尾
さっき先生は,言葉にならないものを感じ取ることが大事とおっしゃっていましたが,これは,病歴聴取と身体診察を分けずに,同時進行でやるということですね。
大賀
はい。
長尾
聴診しようと思っても大きな声で泣かれたり,おなかの触診でも力が入っていたり,我々にとっては身体診察も非常に難しいのですが,このあたりのコツみたいなものはありますか。
大賀
学生のときに内科診断学で,お行儀良く座って,肝臓の触り方,脾臓の触り方,いろいろと習ったわけですが,子供たちは大きさも違いますし,座れない乳児をどうやって診察するかというと,やはりその状況に応じてというのが一番になってきます。子供たちを診察するときに,聴診は泣かせるとできないので一番最初にする,特に口の中を診るのは嫌がって泣くので最後にするという順番もそうですけれども,お母さんが抱っこしている子供の目の高さよりも低いところからそばによって,診察しはじめると怖がりにくいと思います。
長尾
内科でも,高齢者の診察のときに,以前は車椅子とかベッドに寝ている方を上から見おろしながら話していたのですが,最近は医者もしゃがむようになってきました。ひょっとしたら,これは小児科から発想を得たのかもしれませんね。小児の身体診察というのは,もちろん局所的な所見も大事だけれども,全身的にぱっとくる印象で診るというのがとても大事なんですね。
大賀
それは恐らく小児科・内科に限らないことだろうと思いますが,at a glanceでどういう印象を持つかということは,臨床医にとって非常に重要なことです。
長尾
内科は細部の所見も比較的大事にしますが,小児には制限があるので,元気がいいかとか,ぱっと見たときの印象が大事なんですね。

検査の進め方

長尾
同じように,我々内科医にとっては,小児における臨床検査の位置づけは悩みの種になります。成人であればすぐ,血液検査,尿検査と言えるのですが,赤ちゃんに採血してとはなかなか言いにくい部分もありますし,小児科の先生方は,そういうルーチンの検査をどのように位置づけていますか。
大賀
採血するというのは,それだけで侵襲的になります。しかも採血がなかなかしにくくて1回で採れなかったりすることもありますから,先生がおっしゃっられたように,最小限にする。親御さんも心配で,熱が出たその日に乳児を連れてきたりしますけれども,採血はしてほしくない。元気が良かったら,採血が必要なことはそうありませんので,熱が出て数日たつとか,そういった状況を判断してからでいいと思います。それから,採血するにしても経時的な変化が重要ですので,その辺を親御さんによく説明してから検査することにしています。検尿などはなかなか採りづらく,検尿のパックを渡しておいて,おうちで採ってきてくださいということで,採り方まで教えて再来してもらうようにしています。
長尾
我々が診る外来の小児では,感染症による発熱が多いと思います。白血球の数,核の左方移動,CRPを診たいと思っても,1日目はよほどでなければ採血しなくてもいいということですが,逆に,1日目から採ったほうがいいのはどういうケースですか。
大賀
乳幼児で,発疹と発熱が同時に出てぐったりしているとか,意識障害があるとか,熱性痙攣かどうか悩むような痙攣性の疾患などでは,来たときにすぐ採血します。
長尾
白血球の数や核の左方移動を,細菌感染かウイルス感染かの一つの指標にすると思うのですが,そこは小児もほぼ同じと考えてよろしいですか。あるいは,特に注意したほうがいいというものはありますか。
大賀
発熱性疾患の場合,細菌感染であればCRPがそろそろ上がってきそうだというタイミングで採血するほうがわかりやすいです。内科や成人科の先生と比べると,我々は時間経過を追ってCRPを追うことがしばしばあります。
長尾
白血球の数に関しては,数が多いと要注意ということでよろしいですか。
大賀
いえ,やっぱり中身を診ることが重要です。できれば,白血球全体よりも,好中球が多いのか,リンパ球が少ないのか,そういったことをみていきます。例えばリンパ球も,極端に少ない乳幼児は注意が必要です。

抗菌薬使用の考え方

長尾
感染症ということになりますと,抗菌薬をどうするかが治療の最初の選択肢として出てくるわけです。成人でも,週末に入るから一応出しておこうかというような抗生物質の使い方がございますね。我々は,特に小児になると不安が高くなりますので,念のためという抗菌薬の使い方が増えてくると思うのですが,小児科の先生方はこのあたりをどうしていますか。
大賀
原則として,抗生物質を使わなくていいウイルス性の感染症の発熱がほとんどですので,念のためという抗生物質の使い方はあまりお勧めできません。というのは,昔は,感染症に対する抗菌剤の適正使用に関するガイドラインなどはなく,かなり使われていましたが,今は減っています。中耳炎でも,耐性菌によるもので入院が必要になるといった随分悩ましい症例も,抗生剤をできるだけ使わないようになって減ってきたように思います。また,外来で使用する経口の抗生物質に関しても,特に年少の学童は溶連菌感染症でいろんな合併症を起こしますので,これには耐性を作らないペニシリン,とくに下痢をしにくいアモキシシリンなど,九州大学医学部小児科教授大賀正一先生あとはマイコプラズマに対するマクロライド系,実はそれぐらいで,非常にシンプルにできるのが小児科だと思います。
長尾
実際の臨床では,経口セフェム,世代の高い経口セフェムが使われているケースが多いと思うのですが,今のお話では,あまり登場する場面はないのではないかということでよろしいですか。
大賀
必要最小限でしょう。

見逃してはいけない小児疾患

長尾
我々が遭遇する病気は感染症が多いのですが,年代でも違うかと思います。この年代はこういう病気が多いので,こういうことを念頭に治療してほしいというようなこと,また,その中でも特に危険で見逃してはいけない疾患を教えていただけますか。
大賀
乳幼児で,発熱とともに痙攣が起こっているときは熱性痙攣が一番多いのですが,これは6ヵ月から6歳までということで,年齢に幅があります。これを外れる子の痙攣で,15分以上続く重積状態や繰り返すものは,脳炎・脳症の始まりだったりするので,私たちも非常に注意します。それから,おなかが痛い乳児,吐いたりする乳児の中には,腸重積が隠れています。これは見逃してはいけません。もう一つ,私たちが怖いのは腸の軸捻転です。これは新生児から老人まで起こりますが,健康な子にイレウスが起こったときには注意が必要です。虫垂炎などは3歳未満にはないと考えられていますが,こういうものが見つかったりしますので,そこは非常に注意するところだと思います。おなかを痛がっている乳幼児に浣腸して,それで便秘などが良くなったりということもあるのですが,痛がったまま帰すのは不安になります。
長尾
おなかを痛がっている乳幼児を,痛いまま帰してはいけないということですね。
大賀
痛み止めをあげてそのまま帰すのは非常に危険です。
長尾
もう少し年齢が上がって,学童とか,そのくらいになって注意すべき疾患は何んでしょう?
大賀
学童になりますと溶連菌感染症が起こってきますが,発疹が出るものと出ないものがあります。それから,キャリアということがありまして,自分には症状がなくても,結局その方が周りの流行を作ってしまうことがありますので,溶連菌感染症はいつも注意する疾患の一つです。細菌性髄膜炎や重症肺炎といった重症感染症は,予防接種の効果があらわれて減ってきましたが,その逆に,実は川崎病が増えています。これは外来で診ることになりますが,発熱が続く場合,9日目までにガンマグロブリンを始めないと,冠動脈瘤を作るリスクが出てきます。金曜日の夜に熱が出始めたときは,土,日,月曜日が祝日だったりすると,それで数日たつわけなので,注意している疾患の一つです。
長尾
川崎病は念頭にないと診断が難しいので,発熱を診たら常に川崎病を思い出すことも大事かと思いますが,川崎病を疑うきっかけになる所見はどのようなことでしょうか。
大賀
川崎病は6つの診断項目があってこれらの症状が時間を追って出てきます。まず発熱,そして不定形発疹,頸部リンパ節が腫れてきて,化膿性リンパ節炎かなと思ったりするので,乳児から若年幼児にかけては注意が必要です。手足のテカテカ・パンパンはすぐに出ませんので,先ほどお話ししたように,経過を追うということです。小さい子であれば,抗菌剤アレルギーはそう多いものではありませんが,歴史的にも,スティーブンス・ジョンソン症候群と川崎病の判別が難しかったように,最初から抗菌剤を投与すると,薬の影響で発疹が出ているのではないかということで鑑別にも困ります。やはり熱が出ている子の経時的な観察が重要になってくると思います。
長尾
そういう意味でも,抗菌薬はあまり安易に使わないほうがいいということですね。もちろん観察も疾患ごとに違うと思いますが,単に漫然と見ているだけでは見えるものも見えません。そこで,一般的な話で結構ですが,観察上,特に注意している症候があれば教えてください。
大賀
小さい子は食欲と機嫌が一番です。成人科でも,かかりつけ医がいることが重要と言われていますが,特に子供の場合はダイナミックに動きますので,ふだんはどうかということがわかっている先生でない場合,判別がなかなか難しいと思います。だから,急患センターなどで私どもがワンポイントで診るというのは,やっぱりストレスフルなことです。
長尾
そこは高齢者も全く同じで,ふだんを知っていないと,意識障害で見当識が低下しているのか,もともとあった認知機能の低下なのかがわかりません。

小児科と内科の連携

長尾
話題は少し変わりまして,患者さんの年齢が上がるに従って,小児科から内科への受け渡しということでは,我々受け取る側もどのようにすればいいのかと悩むところです。九州大学はそのあたりにもかなり力を入れていると伺いましたが,その点をお聞かせください。
大賀
私たちが研修医のころには亡くなる病気であった先天性の複雑心奇形の心臓病や,白血病を初めとする小児癌の患者さんの予後が非常に良くなってきて,治癒するようになってきました。その子たちに二次的に起こってくることにどう対応するかということも重要です。アダルトCHD(congenital heartdisease)という言葉が出てきたように,思春期から二十歳ぐらいまでの間は,いろいろな社会的な変化が起きるときですから,九州大学病院では,循環器内科と小児科の先生が一緒に診るトランジション外来を開設しています。小児がんのフォローアップでは,二次癌や不妊といったいろんな問題がありますので,長期で診ていくことに取り組んでいます。これは,こども病院のように,いつ卒業させるかが難しい病院と違って,大学病院ならではの連携を築くことができます。福岡市立こども病院と組んだ形で,そのようなトランジションを成人科の先生と一緒にとりくんでおります。
長尾
開業の先生方がこれにどのような形で入ってくるとお考えですか。
大賀
それこそ小児科医が小さいときから診てきた基礎疾患のある患者さん,もしくは思春期や小児期の後半で発症してきた患者さんを成人科の先生にお願いするとき,現在の診療の主体は成人科であっても,以前から診てきたホームドクターの情報が必要になるので,ご開業の小児科の先生方も,成人診療科の先生とつながっていくことが重要になってくるかと思います。
長尾
我々としては,そのようなバックアップをいただけると非常に心強いですね。親御さんも最初は,ずっと小児科だったけど内科で大丈夫だろうかという心配げな顔をしておいでになります。それが,必要なときには小児科の先生も引き続き診てくれますよということを言うだけで,随分安心されるでしょうね。ぜひその取り組みをどんどん進めていただいて,我々も参加させていただきたいと思っております。

母親への病状説明

長尾
それから,保護者,特にお母さんは,患者さんと同等か,時にはそれ以上に大事な存在になるかと思います。小児科の先生方は,保護者への対応が上手だと思うのですが,どんなポイントをついていらっしゃるのでしょうか。
大賀
恐らく現在お母さんの子育てのストレスは大きなものだと思います。昔は大家族で,おじいちゃんやおばあちゃんが,これぐらいは大丈夫よと言ってくれる環境だったのが,現在はそういう環境ではなくなって,熱が出たらすぐ病院に連れて行く。また,働いているお母さんが抱えるストレスは,従来とは比べ物にならないのではないかと考えます。特に注意しないといけないのは,お母さんが子供に何かをして,この子はぐあいが悪いんですといってドクターショッピングをする,ミュンヒハウゼン症候群のようなものがございます。こういうドクターショッピングをされると,どの先生もわからなくなりますので,そういった意味でも,成人科と同様に,私たち小児科でもかかりつけ医が重要になってくると考えています。
長尾
お母さんに説明するときに,いいですよと安易に言わないほうがいいという考え方もあって,予後を少し慎重に言うドクターと,逆に心配させないように,大丈夫ですよということをかなり強調するドクターがいます。お母さんの性質とか,それまでのつき合いとか,いろんなことがあるかと思いますが,その辺については何かお考えがありますか。
大賀
急患センターでもそうですけど,初診で来られたときは大変な病気と思っていないので,例えば小児リウマチのように非常に長くかかる病気であったり,白血病であったり,そういった可能性を強く言いますと,そこにはもう受診しなくなります。継続してかかっていただくことで,そういうものをきちっと見つけて,納得していただく。また,詳しい検査をするために,大学病院やこども病院を紹介していただくときの重要な背景になりますので,継続診療が重要になると思います。
長尾
少なくとも最初のうちは,あまり重篤だと言い過ぎないほうがいいということですね。
大賀
そう思います。また最近は,発達の問題を抱えたお子さんも随分出てきています。足が痛い幼児で一番重篤な疾患には,白血病や若年性特発性関節炎がありますが,ビタミンC欠乏の壊血病は足の痛みから始まります。でも最近経験した成人と違って,非常に早い時期から足の痛みというのが必発でした。発達障害や精神的な問題を抱えた患者さんには,見逃されやすい食行動の異常による栄養問題などもありますので,そういうことに注意しながら診ています。
長尾
とても心配しているお母さんをほっと安心させるような言葉はありますか。
大賀
結局,お母さんは難しい話を期待しているわけではなくて,やっぱり安心したいんだと思います。子供たちは先生に,自分の子だったらこんなふうだよと言ってくれるのを期待していると思いますので,年齢に応じてわかりやすい表現を使ってあげることが,一番安心させられるのではないかと思います。

教育者としての社会的役割

長尾
先生のお人柄がにじみ出るようなコメントですね。それに関連して,私たちが子供のころの小児科のドクターというのは,社会的な意味での先生というか,物事の善悪を教えてくれるところがあったかと思います。今は世の中も随分変わってきていますが,私は,小児を担当する医師というのは,そういう社会的な責務をある程度担っておいてもいいのかなと思っていますが,先生はどうお考えですか。
大賀
私たちが子供を診るというのは,長いフォローアップ期間があるということで,大きな責任がございます。同時に,その子たちが大きくなって育っていくことに喜びを感じる仕事なので,非常にシンプルに言えば,二十歳になって自立するときには心も体も健康な形で,基礎疾患があってもそれをコントロールできるようになってもらうことを目標にしています。その教育者としての社会的役割というのは,そういうところが原点かと思います。だから,病気が良くなった子供たちが医療従事者として働いてくれていたりすると,大変嬉しく思います。
長尾
そうですね。先生の教室のドクターは皆さん,きっとそういうハートを持って診療に当たってくださっているのだろうと思います。本日は,実際的な小児の身体の診かたから,精神的な問題も含めていろいろと教えていただきました。最初に申しましたように,我々,小児を必ずしも専門としていない医師が小児を診ているのが現状ですが,これは,小児科の先生に助けていただきながら,これからもやっていかなければならないと思っています。そこで先生から,何かご助言あるいはエールがあればいただきたいと思います。
大賀
小児科医の数が足りませんので,生まれてすぐの1ヵ月健診ぐらいまでは産科の先生に助けていただいたり,地域では内科や外科の先生が小児医療に随分貢献していただいて,私たちも大変ありがたく思っているところです。先生方は,子供たちにファーストタッチをするとき非常にお困りになるかもしれませんが,まず,ファーストタッチはやっていただいて,熱が下がらなかったり,いろんな状況で少しでも悩んだりしたときは,必ず一度小児科にご相談いただく。そこで小児科医が振り分けますと,小児特有の疾患を見逃すことがなくなります。一般の医師から見ると,餅は餅屋と思われるのかもしれませんが,小児は臓器別に回す前に,まず小児科を通していただけるといいと思います。
長尾
ありがとうございます。とても心強いメッセージで,いつも後ろに控えていただいているということであれば,我々も少し心の荷が軽くなるように思います。内科は臓器別の縦割りになってしまって,その弊害も出てきているところですので,まだ縦割りの専門医ではなく,自分は小児科だというその姿勢を,我々実地医家としてはぜひ見習っていきたいと思います。これからもいい関係で,ぜひよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

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