不整脈は、時には突然死の原因となることもあり、救急治療の対象となることがある。すなわち、不整脈のため血行動態が悪化し、失神ないしは不心全を来すことおよび自覚症状が強い場合には治療の対象となる。臨床的には、徐脈性の不整脈と頻脈性のものがある。発生部位別では、上室性と心室性に分類されている。治療対象となるのは殆ど頻脈性不整脈である。
1.頻脈性不整脈
1)上室性頻脈性不整脈
上室性の場合、発作性上室性頻拍(PSVT)およびWPW症候群による心房細動脈以外は治療の対象とならない。
① 発作性上室性頻拍症(PSVT)
a) 発作時
発作時には、まずValsalva法、眼球圧迫法、頚動脈洞マッサージ等の迷走神経刺激をこころみる。無効の場合には薬物療法をこころみる。
●生理食塩液20mLで希釈し、3~5分かけて静注する。
●生食又は5%糖液にて希釈し、血圧ならびに心電図監視下に、10分間で徐々に静注する。
<発作時>
<発作時>
b) 発作の予防
頻脈発作の予防には
<1日3回食後>
<1日3回食後>
② 心房細動、粗動
a) 発作時
まず、前胸部叩打をこころみる。無効であれば、除細動の適否を考える。
発症して1~2週間以内で、頻脈や血圧低下の場合には、電気除細動をこころみる。
頻脈性心房細動の場合には、低K血症がないことを確認のうえ、心拍数を140/分以下を目標にして以下の薬剤を注射する。
以上のいずれかを、20mLの生理食塩液に希釈して3~4分かけて静注する。
<1日2回食後>
●慢性の場合や基礎疾患のある場合には、再発が多いので、心拍数を薬剤でコントロールする必要がある。
<1日2回食後>
<1日2~3回食後>
以上を単独あるいは併用する。
b) 細動、粗動の予防
上記の薬剤に加えて
<1日1回食後>
<1日3回食後>
などの薬剤が使われる。
③ WPW症候群
WPW症候群による発作性頻拍症の場合、ジキタリス剤やCa拡張薬は、副伝導路の不応期を短縮するために禁忌とされている。
a)発作時
●20mL生理食塩液にて1~2Ampを希釈し、10~15分かけてゆっくり静注する。効果がない時には総量500~1,000mgまで増量する。
●20mLの生理食塩液に希釈し、10~15分かけて静注する。
以上のような治療にて反応がない場合には、電気的に除細動を行う必要がある。
b)発作の予防
<1日3回食後>
<1日3回食後>
などを単独あるいは併用する。
2)心室性頻脈性不整脈
① 心室頻拍
心室頻拍は緊急に治療を要することが多い。
発作時
●生理食塩液20mLで希釈し、2~5分かけて静注する。
<1日2回食後>
<1日2回食後>
等の単独あるいは併用をこころみる。
②心室性期外収縮
突発性の期外収縮の場合、突然死の危険性が高い。
多源性、R on T、short run などは心室細動に移行し易く、緊急治療の対象となる。
a)発作時
●20mLの生理食塩液に希釈しゆっくり静注する。
b)発作予防
<1日3回食後>
<1日2回食後>
<1日3回食後>
等を単独あるいは併用する。
2.徐脈性不整脈
洞房ブロック、洞停止、完全房室ブロック等に伴う極端な徐脈(心拍数が40/分未満)が緊急治療の対象となる。
a)発作時
●適宜静注する。
●500mLの生理食塩液に希釈し、ゆっくり静注する。必要に応じて増量。
b) 発作の予防
<1日3回食後>
以上のような治療で奏効しない場合には、緊急の一次ペーシングや永久のペースメーカーの植え込みが必要となる。